「鈴鹿8耐」が今年も終わりました。
毎年7月、僕らレースアナウンサーも特別な思いをもって臨むレースです。
なぜなら、鈴鹿8耐は現在の鈴鹿サーキットの原点とも言えるレースで、この大会が1978年に情熱ある方々の手によって生まれなかったら、のちのF1開催も、世界の鈴鹿と呼ばれることもなかったからです。それ以来、42回目の大会となった2019年の鈴鹿8耐を振り返ります。
リラックスして挑んだ2019年
昨年は先輩アナウンサーのピエール北川さんの欠席により、急遽スタートとゴールを担当するメインアナウンサーを務めることになり、ものすごいプレッシャーの中で迎えた鈴鹿8耐だったのですが、それが遠い昔のように感じたのが今年の僕の鈴鹿8耐でした。
当初から2017年以前と同じ体制に戻ることは分かっていたし、いつもより少しリラックスして2019年の鈴鹿8耐を迎えられたような気がします。僕に求められていることと先輩に求められていることは違うと思うし、僕も先輩に求められていることをそのままやろうとは全く思いません。喋り方、進め方がどうであれ、「自分の伝え方でお客様に楽しんで頂けるように頑張る」というのが一番だと考えるようになりました。
僕にとっては16回目の鈴鹿8耐ですが、いつも意識しているのは「初心者の方を置いてきぼりにしない」ことです。最近は若いお客さん、新規のお客さんも増えてきているので、そう言った方々にも何か発見をしていただき、8耐というお祭りを楽しんで頂きたいという思いがあります。なぜなら僕自身が1999年に初観戦した時は「バイクレースの知識皆無だった」からです。
そんな僕でもこのレースを好きになり、鈴鹿サーキットのレースアナウンサーという仕事を通じてバイクレースの魅力に触れ、今は鈴鹿8耐の実況アナウンサーをやらせてもらっている。ヨチヨチ歩きの子供が立派にスポーツをできるようになるまで成長するように、常に初めての鈴鹿8耐で経験したことを忘れずにアナウンスに盛り込みながら、知って欲しいポイントをお伝えするように心がけています。
その一つがYahoo!ニュースでの「鈴鹿8耐の基礎講座」記事の執筆です。マニアな方や鈴鹿8耐のファンの方には「すでにそんなこと知ってるよ」という興味のない記事だったかもしれません。でも、僕自身が初心を忘れないためにも、こういう記事を書きました。初心者のファン(主に4輪レースとかはある程度知っているけど2輪は知らない人/たまたま連れてこられて知識なかったけど、興味を持った人)のお役に立っているなら最高です。リツイートにご協力頂いた既存ファンの方にも感謝です。
レースウィーク中にこんなことがありました。トークショーをご一緒させていただく通訳の方に「辻野さんの記事を読んで予習ができました」と言っていただきました。これはとても嬉しいことでした。なぜならこういう記事を書く目的はもう一つあり、鈴鹿8耐に携わるいろんな業者の方々に「8耐の勘どころ」を知って欲しいからです。鈴鹿8耐では多くのスポンサーブース、関連イベントが開催されます。そのイベントを作るのはバイクレースどっぷりの方々ばかりではありません。特に大手企業になれば組織が枝分かれし、最前線で仕事をする方々の中には全く知識がない方もいらっしゃいます。そういった方々に無料の参考書にしていただき、より良い台本作り、演出作りをして頂けたらと思いながら書いていきました。
鈴鹿8耐も歴史が長くなり、幅広い世代のファンに支えられています。昔を知っている人と知らない人のギャップは大きくなっていく一方だと感じていますし、何が楽しいのか分からない、何がすごいのか分からない、どこで調べたらいいのか分からないという方々のお役に立ちたい。僕はそんな思いでアナウンスと執筆を行うようにしています。
アナウンスでは喋り足りない部分がたくさんありましたが、今年は日テレの「FIM世界耐久選手権」でも実況させて頂いていますし、いろんなネタも用意できたし、喋っていて本当に楽しかったなぁというのが今年の鈴鹿8耐の印象でした。
ダニー・ウェブ選手との出会いも
今年の8耐では面白い出会いもありました。Yahoo!ニュースの記事にも執筆したFIM世界耐久選手権のレギュラーライダー、ダニー・ウェブ選手との出会いです。
詳しくはYahoo!の記事を読んでください(笑)
TEAM FRONTIERから出場が決まったダニー・ウェブ選手は鈴鹿8耐のスターティンググリッドで笑顔で握手を求めてくれました。彼自身の鈴鹿8耐に出たいという思いは強かったし、彼の思いを僕も無視したくなかった。僕もここまで16年間、モータースポーツ業界のいろんな立場の先輩方に紹介をして頂いたり、教えて頂いたりして今があるから、思いの強い人には応えていきたいと思っています。
だから、彼とスターティンググリッドで会えたことは本当に嬉しかったですし、17位完走でライダーとしてもポイントが取れたことは本当に良かったと思います。TEAM FRONTIERはダニー・ウェブ選手も戦力として加わり、来年の出場権を獲得できましたし、これは上田昇さんの目標でもあったから、最高の結果。彼から改めて学びました。思いが強ければ、道は必ず繋がっていくということを。
お互い知らない人間同士、立場が全然違う者同士、国や文化が全く違う者同士でもつながりあっていけるのが鈴鹿8耐という国際レースの良い部分ですね!
カワサキ、26年ぶりの優勝!
2019年の鈴鹿8耐・決勝レースは本当に面白いレースになりました。こんな面白い展開のレースって今まであったっけ?って思うくらいワークスチームの「無双感ハンパない」走りとバトルが楽しめましたね!!
僕は中継ぎ4時間の実況を担当しましたが、4時間があっという間に終わりました。ゲストには青木拓磨選手、青木治親選手にお越しいただき、楽しいトークに加えて解説者としても素晴らしいアナウンスをして頂きました。このお2人の力もレースが短く感じた要因なんですが、何と言ってもバトル、メーカー同士の鍔迫り合いは本当に見応えがありましたね。
夜間走行でトップが入れ替わり、カワサキ優勝かと思いきや、SERTのエンジンブローで出たオイルに乗ってジョナサン・レイ選手(カワサキ)がまさかのファイナルラップ転倒。。。そのまま赤旗となり、ヤマハ優勝で表彰式に。僕はFIM世界耐久選手権の年間チャンピオン表彰の担当だったので、表彰台の裏はもう大混乱でした。
結局、カワサキが26年ぶりに優勝という結果になり、お客様にも後味の悪い結果発表となってしまいましたが、時間はどうやっても戻すことはできません(僕はジャッジについて議論するつもりはありませんのであしからず)ので、素晴らしいレースを展開した3メーカーワークスの健闘を改めて讃えて頂ければと思います。こういうレースが来年以降も続くであろうと想像するだけでワクワクしませんか??
とにかく、今回僕が強く感じたのは中須賀克行選手(ヤマハ)、高橋巧選手(ホンダ)のパフォーマンスはすごいということ。MotoGPテストライダーのステファン・ブラドル選手に加え、ジョナサン・レイ選手、レオン・ハスラム選手、トプラック・ラズガットリオーグル選手、アレックス・ロウズ選手、マイケル・ファン・デル・マーク選手、清成龍一選手といったスーパーバイク世界選手権のレギュラーライダーで固められたワークスラインナップの中で全く引けを取らない走り。これが今の全日本JSB1000のチャンピオン争いのレベルの高さだと実感しましたね。僕らは普段から物凄いレースを見せてもらってるんだと。中須賀選手、高橋選手への尊敬の念が増した鈴鹿8耐でした。
ご来場ありがとうございました
いろんな出来事があった42回目の鈴鹿8耐。4日間合計で10万9000人の方にご来場頂きました。近年、様々なモータースポーツの観客数が頭打ちとなっている中で、観客動員数が増えることは素晴らしいことです。
特に今回は予想外の台風6号の到来で、ずーっとセッションが始まらず、雨の中、辛抱強くお待ちいただいたお客様には感謝の言葉しかありません。雨の中でも猛暑の中でも熱い声援を頂き、本当にありがとうございました。
来年は東京オリンピック開催に配慮して1週早い2020年7月19日(日)に開催です。
僕らもさらに勉強してみなさんに楽しんでいただけるように頑張りますので、来年も変わらずご来場頂きますようにお願いします!!!
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